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【第1部】 第28話 龍の気遣い②

last update Last Updated: 2025-07-18 17:01:03

 その夜、私は自分の部屋のベッドに横たわり、考えにふけっていた。

 天井を見つめながら、今までのことを脳裏に浮かべていく。

 いったい、ヘンリーはなぜ私のもとに現れたのだろう。

 なぜ時を超えてまで、この時代に、この国に、私の前に?

 何か大切な目的があるのではないだろうか。そうでなければ、こんなこと起こるわけない。

 人の強い想いが、ときに奇跡を起こす。

 もしかして、この出来事も人の想いが関係しているとか……。

 そのとき、ふいに中村透真のことが頭をよぎった。

 やはり、どう考えても二人が無関係とは思えない。

 二人の共通点……それは私。

 彼に出会って、ヘンリーに出会った。

 二人が同時期に私の目の前に姿を現す。

 そして二人は瓜二つ。

 こんな偶然って……。

「よし! 決めた」

 私は勢いよく立ち上がった。

 夕食を終えた皆は、居間でゆったりとくつろいでいた。

 祖父は新聞に目を落とし、龍はそんな祖父の肩を揉んでいる。ヘンリーは寝ころびながら漫画に夢中だし、その背中をアルバートがマッサージしていた。

 シャーロットは目を輝かせテレビを見ている。

 本当に我が家は、賑やかになったものだと感心しながら、私はヘンリーへ視線を送った。

「ヘンリー、ちょっといい?」

 全員の視線が、一斉に私へと注がれる。

 最近の私たちの気まずい雰囲気を察していたのか、皆かなり驚いた表情をしていた。

 その中でもシャーロットの視線が鋭く、私に突き刺さる。

「……うん」

 ヘンリーは少し躊躇った様子を見せたが、素直に頷いた。

 私は内心ほっとした。

 少し不安だったのだ。ヘンリーが嫌な素振りをしないか、と。

 最近はお互いうまく話せていなかったから。でも、そんな心配は不要だったようだ。

 私はヘンリーを連れ、近所にある公園へと足を運んだ。

 家から

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